文学部講演会「日本・ベルギー 美と知の交流の軌跡」を開催
令和8(2026)年5月30日、午後2時より、渋谷キャンパス学術メディアセンター常磐松ホールにて、文学部講演会「日本・ベルギー 美と知の交流の軌跡」が開催されました。同講演会は、國學院大學博物館で今月23日より開催されている特別展「日本・ベルギー修好160周年記念-美と知の交流の軌跡-」に関連して行われ、およそ250名が聴講しました。
冒頭、谷口雅博・文学部長(同教授)が「本学博物館特別展を共催するルーヴェン=カトリック大学とは大学間協定を締結しており、文学部としても長く研究における活発な交流が行われてきた。その交流がベルギーとの修好160周年を記念した展示や本講演会に結実したことを大変嬉しく思う。展示を後援してくださった駐日ベルギー大使館はじめご協力いただいた関係各位に御礼を申し上げる。本講演会でベルギーと日本との深い交流の歴史を改めて学んでいただけたら幸いである」と挨拶しました。
講演会は手塚雄太・文学部教授の進行のもと、まず「知」の交流の歴史について3名の報告が行われました。まず、渡邉卓・研究開発推進機構准教授が「國學院の歴史と所蔵コレクション」と題して、本特別展に出展した本学所蔵資料を説明し、特に本学の前身である皇典講究所の初代総裁・有栖川宮幟仁親王ゆかりの品々や、同宮家の祭祀を継承した高松宮家ゆかりの貴重な品々について詳説しました。続いて、ベルギー・フランダース政府貿易投資局日本事務所代表のディルク・デルイベル氏が「日白修好通商航海条約(1866年)」と題して講演しました。同氏は関連資料を紐解きながら、幕末の混乱期においてベルギーの外交官たちが根気強く交渉を重ね、武力を背景とすることなく、非常に友好的な形で条約が締結されたことを説明しました。続いて、ルーヴェン=カトリック大学文学部日本学科准教授のアドリアン・カルボネ氏が「有栖川宮熾仁親王の欧米巡遊―ベルギー訪問の舞台裏を垣間見て」と題して講演しました。同氏は、有栖川宮熾仁親王(幟仁親王第一皇子)の欧米巡遊に際してのベルギー訪問について、一行が直前の通達で同国を訪れたこと、それに対してベルギー側が勲章の授与や特別列車の運行などで厚遇したことを、さまざまな資料から明らかにしました。

休憩を挟んだ後半は、3人の研究者から「美」の交流について報告されました。まず、藤澤紫・文学部教授が「浮世絵と東西文化交流-視覚化された情報のゆくえ」と題して、ベルギー王立美術歴史博物館と本学の所蔵する浮世絵を丹念に紐解きました。葛飾北斎をはじめ西洋の技法を積極的に取り入れた浮世絵師や、日本の浮世絵に西洋文化との類似性を見出した画家・収集家たちが相互に影響を与え合いながら新たな芸術を生み出したと述べました。また、同館から出陳された東洲斎写楽の大首絵や鈴木春信の「官女」はロイヤルコレクションとして大変貴重なものであり、改めて鑑賞してほしいと述べました。

続いて、ベルギー王立美術歴史博物館東アジアコレクション主任学芸員のナタリー・ヴァンデぺレ氏が「国王の夢叶う ブリュッセルの『日本塔』をめぐって」と題して講演。パリ万国博覧会で建築家アレクサンドル・マルセルが手がけた建築群に感銘を受けた当時のベルギー国王レオポルド2世が建造した「日本の塔」は、やがて貿易館となって両国の輸出品などが展示されたほか、明治44(1911)年の「ベルギー・日本常設博覧会」では明治天皇より花瓶と漆塗りの文箱が寄贈されるなど、両国の交流に大きく寄与したと解説しました。続いて、進藤久乃・文学部准教授が「クリスチャン・ドートルモンと東洋の文字」と題して講演し、ベルギーを代表する詩人ドートルモンと、その集大成である「ロゴグラム」について詳説しました。画家との共同制作を多く手がけたドートルモンは、言葉の探究を深める中で手書き文字や東洋の文字への関心を高め、日本の書についての考察も行っており、それらが「ロゴグラム」の創造に影響を与えたとの見解を述べました。
講演会後、聴講者は6人の研究者による報告で得た新たな視点をもとに、改めて展示を鑑賞しようと博物館へ向かいました。本学博物館の特別展は6月28日(日)まで開催しています。日本での展示も珍しい貴重な資料の数々を、ぜひご覧ください。