長野 英巳 | KOKUGAKUJIN | 学校法人國學院大學 | 法人サイト

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2023年9月29日更新

KOKUGAKUJIN #12

理容室のオヤジから、短期大学部生の親父に。

 今回のKOKUGAKUJINは、長野英巳さん(家主連絡協議会会長)にお話をうかがいました。長野さんは主に北海道短期大学部の学生が入居しているアパートの家主(大家)さんとして学生の日常生活を支えてきただけでなく、全ての在学生が安心して有意義な学生生活を送れるようにと、様々な形で寄り添い続けてきました

Q 長野さんが家主(大家)になられた経緯を教えてください。

 私の生まれは十勝岳の麓にある美瑛という町なのですが、昭和41年に結婚と同時にこの滝川市にやってきて、理容室を開業しました。今から57年も前になります。
 ちょうど昭和の終わり頃でしょうか。お店のお客さんで不動産会社を経営されながら家主としても取り組まれていた濱田さんという方から「いい物件があるから買いなさいよ」と勧められてアパートを購入しました。それから、女子短期大学(当時)の学生さんに部屋をお貸しするようになりました。その数年後、他のアパートに入居されていた女子短期大学の学生さんがトラブルに巻き込まれたことがありました。それを契機に「家主の手で学生さんを守ろう」ということで、家主連絡協議会という組織が発足し、現在では家主としてだけでなく、協議会の会長としても学生に寄り添うようになりました。

Q 長野さんはどのような形で、家主連絡協議会に関わっているのですか?

 発足当時は、協議会として定期的に夜間パトロールや、年に3〜4回ほど、学生さんが入居されているアパート周辺の防犯啓蒙活動をしていました。私も時間が許す限り参加していました。その後、平成18年頃に北海道警察の認可を受けまして、いわゆる『青パト』を使っての青色防犯パトロールをするようになりました。
 私が会長に就任した前後からは、自分のアパートに入居されている学生さんだけではなく、短期大学部に通う全ての学生さんたちとも交流を深める目的で、定期的に様々なイベントを開催するようになりました。最初に始めたのが、新入生を対象としたウエルカムパーティーです。入学したばかりで不安を感じている学生さんが多くいます。1日でも早く新しい環境になれ、友だちをつくるきっかけになればということで、協議会の家主たちがカレーライスを振る舞い、みんなで食事をしながら交流を深めてもらっています。
 平成19年にキャンパス内にパークゴルフ場ができてからは、学生さんと大学職員の方を交えてのレクリエーション大会を定期的に開催しています。このほかにも、『合同地域クリーン作戦』と称して、それぞれの学生さんが入居されているアパート周辺の清掃活動を行ったりしています。活動後は、キャンパスに集まって滝川市名物のジンギスカンを食べるというのが恒例になっています。当初は学生さんが集まるか不安でしたが、どのイベントにも100人以上の学生さんが集まってくれて、私も学生さんとの交流を深める良い機会になっています。

Q 会長として、ご苦労されていること、されたことはありますか?

 会員の皆さんが非常に協力的なので、特に苦労していることはございません。学校側とも年に一度、我々と学長さんや事務局長さん、職員の方を交えて情報交換会を行い、スムーズな運営や支援に役立てています。ただ一つ、苦労ではないのですが、コロナ禍に在学されていた学生さんには、私自身、非常に申し訳なく思うことがあります。特にコロナの年に入学された学生さんは、我々が行っているイベントや行事を体験されることなく卒業されています。学校との情報交換会も開催できなかったので、例年のように、短期大学部事務局で吸い上げていただいた学生さんの率直な意見を聞いて、我々の対応やアパートの改善に活かすということができませんでした。状況が状況なので仕方がないといえばそれまでですが、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 唯一の救いと言いますか、できてよかったなと思うのがお米の配布です。コロナの年に入学された1年生全員に、滝川市がお米5キロを無料配布しました。協議会では「1年生だけじゃ、2年生がかわいそうじゃないか」と支援を申し出て、2年生にも配布してもらいました。多くの学生さんから「お米ありがとうございました。とても助かりました」という声をいただいて、皆さんが辛い時期に多少はお役に立てたと思っています。

Q 家主さんとしては、入居されている学生さんとはどのように接しているのでしょうか?

 学生さんは、親元を離れて初めての一人暮らしで不安も多いと思います。その不安をなくしてあげて、困ったことがあればサポートするというのが私の役目です。だから学生さんが入居した時に、「わからない事、困った事があれば、何でも相談してね」と伝えています。また入居前には親御さんから電話をいただき「うちの子は精神的に少し弱いところがあるのでよろしくお願いします」とか、お子さんに関する不安や心配事をお聞きすることが多いので、それを踏まえて一人ひとりの学生さんに寄り添うようにしています。
 入居したばかりの頃の相談事は、洗濯機の使い方や銀行での振り込みの仕方など、初めて経験することに関してが多いです。相談が来れば、部屋まで行って教えたり、一緒に銀行まで行って教えたりしています。
 逆に学生さんが困らないように、私から予め教えることがあります。それは、冬場に家を数日空ける時は水を落とすことです。北海道ならではだと思いますが、そうしないと水道管が破裂してしまいます。だから新しい学生さんが入居されたら、水の落とし方を最初に教えるんです。でも、落とすのを忘れて帰省してしまう学生さんがいたりもします。そのため、私は帰省する前夜に学生さんに必ず確認して、水を落とすように声をかけることにしています。こうした日頃の接点を私は大切にしています。
 年に数回ですが、入居している学生さんに集まってもらって、バーベキューをしたりもしています。普段も何かわからない事や困った事があれば相談に来るのですが、こうした場だと普段とは違った話や悩み事を聞かせてもらうことができ、とても貴重な時間になっています。

Q やりがいや喜びをどんな時に感じますか?

 私のアパートに入居している学生さんとは接点が多いのですが、他の学生さんたちとはイベントの時ぐらいしか会うことがありません。それでも、たまに用事があってキャンパスに顔を出すと、学生の皆さんが元気に挨拶してくれるのが何よりも嬉しいです。年に数回しか会うことがなくても、こうして私のことを覚えてくれているのだと思うと。
 あとは他の家主さんからもよく聞くのですが、東京などの地元に帰った卒業生が、北海道に旅行に来た時に、「おじさん、おばさん、元気?」といって訪ねて来てくれる時。「あぁ、家主をやっていてよかったな」と。こちらは老いるばかりですが(笑)、卒業生の皆さんが社会人になってからの姿を見ることができるのは、家主冥利に尽きると思います。
 新入生のなかには、卒業した先輩の紹介で入居してくれる方がいるのですが、これも嬉しいですね。紹介してもらえるほど、私のアパートの居心地が良かったということだと思いますので。

Q 家主として、大切にしていることはなんでしょうか?

 何も特別なことをするわけではなく、「あたりまえのことを、あたりまえにする」ということです。親御さんから大切なお子さんをお預かりしているので、ここでは私が親代わり、親父代わりと思っています。だから、一緒に住んでいれば親御さんがお子さんにあたりまえにしてあげることを、私が代わりとなって、あたりまえのようにすることを心がけています。

Q 長野さんが考える國學院らしさ(KOKUGAKUJIN)とは?

 ひとことで言えば、「真面目」。真面目だから、素直な人間が多い。素直な人間だから、誰からも好かれる。それが、親代わりとして、学生さんと接していて感じることですね。

長野 英巳

國學院大學北海道短期大学部
家主連絡協議会会長

北海道美瑛町出身
滝川市在住57年。昭和63年から家主として学生を支え、平成18年から家主協議会の会長に就任。現在に至る。

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