2022年6月24日更新
KOKUGAKUJIN #7
紆余曲折しながらも、幼稚園教諭になって本当に良かった
Q 子供の頃は、どんなお子さんでしたか?また、どのような夢を持っていましたか?
幼稚園の頃、ヤマハの音楽教室に通っていました。皆でオルガンを弾いたりして、とても楽しかったんです。それがきっかけで小学校に入ってからは、ピアノの先生に付いて個人レッスンを受けていました。先生の家にはお兄さんとお姉さんがいたので、「おそ松くん」とか「パーマン」とかが載っている少年漫画、マーガレットやフレンドなどがありました。私の家では、マンガは読ませてもらえなかったので、レッスンの順番を待つ間に、そうしたマンガを読むことがすごく楽しみでした。
水泳も得意でした。小学校1年生の夏休みに父に泳ぎ方を教わり、すぐに25メートル泳げるようになったんです。小学校3年生からは水泳の選手に選ばれて、故郷の香川県観音寺市の水泳大会で何度も表彰されたんですよ。毎日プールに通っていたので、夏休みの間は真っ黒に日焼けした子どもでした。中学ではバスケットボール部に入ろうと思っていたのですが、同じ小学校の先輩たちに誘われて水泳部に入部。専門種目はクロールで、1年生の時からリレーの選手に選ばれていました。日本全国のランキングで50位以内に入っていた時期もあります。
ピアノ、水泳、勉強、運動会、文化祭など、一生懸命で楽しかったから、将来は何になりたいとか、どんな職業に就きたいとか、具体的には考えていませんでした。高校3年生になって進路選択に直面した時、キャビンアテンダントなど空を飛ぶ職業に少し興味を持ったのですが、幼い頃からピアノを弾いていたので音楽大学への進学を決めて、隣県の私立大学でピアノを専攻しました。しかし、1年生の夏に指を怪我してしまい完治するのに時間が掛かることもあって進路変更。看護の道へ進むことを考えたのですが、母からの助言などで、幼稚園教諭になる道を選びました。学校の選択に関しては、伯父が國學院大學出身なので親近感もあり、國學院大學幼児教育専門学校(当時)へ進学しました。
Q 学生時代は、どんな学生生活を送りましたか?
上京後は、千歳船橋にあった学校の寮で生活を始めました。学校では、ピアノを弾いたり、紙芝居や絵本を作ったりする専門的な実習のほか、神道や政治経済なども学びました。幼児教育以外の授業も興味深く、楽しかったですね。神道の授業があるのは國學院ならではだと思います。
幼児教育を2年間学んで、さあ就職という時、両親との約束で地元に戻ろうとしましたが、地元での幼稚園の先生の募集がありませんでした。私立の幼稚園もなかったので、地元に帰ることを優先して県職員の試験も受けました。もともと子どもの頃からの性格で、決めつけることや型にはまったことが好きではないことが幸いし、職種は柔軟にとらえようとしていました。しかし、なかなか就職先が決まらないまま卒業が間近になった3月、学校から國學院大學附属幼稚園への就職を打診されて、今の職場への就職が決まりました。両親は幼稚園の先生になるのであれば、と東京で就職することを許してくれました。高校を卒業する際の進路でも、就職の時の進路でも様々に逡巡してきたのですが、幼稚園の教諭になって40年が経ちます。進路に迷った時期も含めて多くの経験や様々な人との出会いが私の糧になっています。今は、幼稚園の先生になって本当に良かったと思っています。子どもたちの笑顔は、何よりの喜びですから。
Q 子どもたちを教育する上で心掛けていることはありますか?
子どもが好きなだけでは、子どもたちを教育することはできません。甘やかすのと教育は違います。幼稚園教諭を長い間続けてきて思うのは、適切な距離感を保ちながら子どもたちと接することが大切だということです。
私たちの園では、物事を達成するための計画や調整を子ども自身で考えさせるようにしています。自ら考えて最後までやり遂げることの喜びは、自信にもなり、将来、必ず役立つと信じています。また、クラスの皆で学ぶことで、色々な友だちがいることを知ったり、他の子たちとの関り方を考えたり、大勢の中での自分を見つめることができますから、他者を考慮して自身を律する人に育つと思っています。
Q 森野園長が現在取り組んでいること、これからチャレンジしたいことは何ですか?
園の教育理念は、「日本の伝統・日本の心を大切に」です。園外保育では、國學院大學に行って博物館を見学したり、お辞儀の仕方や神社の参拝の仕方を教わったりします。國學院大學の学生に幼稚園で雅楽を演奏してもらったこともあります。これらは國學院大學附属幼稚園でなければできない教育です。
今後は、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学、大学を有する学校法人のメリットを活かしたプログラムを充実させたいと考えています。これまでも、隣接する國學院大學久我山中学高等学校の先生が園児に教えに来てくれたり、ラグビーやサッカーなどのクラブ活動の試合を見学しに行くなどの連携プログラムを実践してきました。これからは、スポーツを中心に、大学などと連携した多岐にわたるプログラムも実現したいと考えています。
Q 森野園長が大切にしている言葉は?
大切にしている言葉は、「feeling」です。前述しましたが、私は決めつけることや型にはまったことがあまり好きではありません。自分の感覚、直感を大切にしたいのです。子どもたちに対しても、その子を型にはめて一方向で見るのではなく、多面的に見て良いところを見つけるようにしています。
Q 森野園長が考える國學院らしさ(KOKUGAKUJIN)とは?
國學院大學幼児教育専門学校時代から感じるのは、礼儀正しく、真面目で、キチンとしている。これが國學院らしさかと思います。これは、今の中学生や高校生、大学生たちを見ていても変わらない気がします。そうした中から、もっと起爆剤的なものを持った人が現れて、色々と面白いことをやってくれないかと少し期待もしています。
森野 ゆかり
國學院大學附属幼稚園 園長
香川県出身
國學院大學幼児教育専門学校卒業
1981(昭和56年)年4月より教諭として着任。
1991(平成3年)年より主任を務め、2001(平成13年)年4月に園長に就任。現在に至る。