2022年4月28日更新
KOKUGAKUJIN #6
生徒たちとの触れ合いの中に教師としての成長がある
Q 子供の頃は、どんなお子さんでしたか?また、どのような夢を持っていましたか?
東京墨田区の東武亀戸線沿線の下町で育ちました。子供の頃はテレビっ子で、アニメ、特撮、お笑い、ドラマ、プロレス、いろいろな番組を観ていました。学校に行くと昨夜のテレビの話で持ちきりになる時代で、話題の中心になってクラスの友達を笑わせることが好きな、ひょうきんな子どもでしたよ。模型飛行機を飛ばす大会で入賞したという単純な理由からなのですが、大きくなったらパイロットになりたいと思っていました。
テレビ好きの影響からか、中学時代は映像に関わる仕事に就きたいと思っていたり、熱血教師ドラマや実際に出会った先生方の影響もあって「教師」も夢のある仕事だと感じていました。教師になりたい、それも国語の教師になりたいと強く思うようになったのは、高校時代の友人との出会いからだと思います。彼は歌人・演劇家の寺山修司が好きで、彼の影響で寺山さんに興味を持ったんです。寺山さんの「煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし」という歌にとても感動し、言葉には大きな力があるのだと思いました。保護者以外に一番身近な大人である教師の言う言葉が、時に子どもたちに大きな影響を与えるのだと感じたからです。
Q 大学生時代は、どんな学生生活を送りましたか?
国語と社会の教員育成で定評のある國學院大學の文学部に入学しました。小学校では野球、中学高校時代は部活動でサッカーに打ち込んでいたので、大学では学問を修めようという気持ちが強くありました。「三国志」や「項羽と劉邦」などの勇ましい漢文学に惹かれて、1年生の後半から「國學院大學漢文学会」に入会しました。研究会では日頃の研究だけでなく、皆で古本店を巡ったり、合宿に行って研究を深めたり、学園祭では研究発表の側で易占いもしていました。占いは50本の筮竹で占うのですが、素人ですから占い結果に自信はありません。時々、「すごく当たっている」などと言われることがあって、そんな時は怖さを感じてしまうので、占う前にあまり信用しないようにと伝えてから筮竹を握ったものです。
3年生になってからの専攻は、もちろん漢文学です。漢文学専攻は学問指導の厳しさが有名で、当時、進む学生は非常に少なかったのですが、そこで吹野先生、石本先生、前学長の赤井先生などの先生たちと出会い、熱い指導を受けて、研鑽を積むことができました。卒業論文は曹操の息子である曹植の漢詩の研究です。卒業後は進学して学問を続けようと考えていたので就職活動は全くしていなかったのですが、就職課の方から「附属校である國學院高等学校の採用試験を受けてみないか」というお話をいただきました。高校時代からの夢のひとつだった国語教師になる道が拓けるかもしれないという気持ちと漢文学をさらに学びたいという思いに揺れ、とても悩んだ末に国語教師の道を選び、今に至るわけです。
Q 杉田先生が現在取り組んでいることは何ですか?
学業とクラブ活動が両輪となり相乗効果を生み出して、生徒たちが成長していく環境を整えたいと考えていたのですが、コロナ禍になってしまった今、その対応に追われる毎日です。オンライン授業を取り入れ、対面授業が少なくなったので、生徒たちとの距離を縮めることに腐心しています。教頭という立場になって担任やクラブ活動の顧問を持たなくなったこともあり、生徒たちとの触れ合いが、何より貴重なものだと改めて強く感じています。憎まれ口をたたいてくれることさえ愛おしいですよ。学園ドラマの主人公は教師ですが、実際の学校では生徒が主人公です。コミュニケーションをとって、一人ひとりの生徒の成長を支えるのが私たち教師の仕事です。もちろん、自分の考えをしっかりと持った生徒もいて、彼らとの交流の中で教えられることもたくさんあります。教師も生徒たちから育ててもらっているんです。生徒も教師もお互いに成長していく場が学校ではないでしょうか。
Q これからチャレンジしてみたいことはありますか?
本校は都心にある学校で交通アクセスも良いのですが、敷地・校舎の狭さは否めません。スポーツであれ、文化的な活動であれ、もっと活発に活動できる環境を整え、そして、生徒たちが主体的に活動していくお手伝いをしてあげられればと思っています。また、海外や国内への研修をさらに充実させたいと思っています。
Q 杉田先生が大切にしている信条は?
大切にしている言葉は、「自律」「辛抱」「感謝」「謙虚」です。人間は一人では生きていけません。本校の場合、一つの学年に600人の仲間がいます。学校はその仲間たちとの集団活動の場でもありますから、みんなで生活して行く上で必要なこととして、折に触れてこれらの言葉を生徒たちに伝えてきました。これは自分自身にも常に肝に銘じている言葉です。
Q 杉田先生が考える國學院らしさ(KOKUGAKUJIN)とは?
地道。これが國學院で育った生徒や学生にピッタリと来る言葉だと思います。穏やかで、堅実で、派手さは無いのですが、スルメイカのような噛めば噛むほど味の出る人たちが多い気がします。付き合えば、じわじわと良さが滲み出てきて、きらりと光るものを見せてくれる。目立つわけではなく、見えないところで力を発揮している。そんな人たちが國學院らしい人ではないでしょうか。
杉田 隆時
國學院高等学校 教諭(国語科)
東京都出身
國學院大學文学部卒業
1992年4月より国語科専任教諭として着任。
2009年より入試部長を3年間、2015年より学年主任を3年間勤め、2019年4月に教頭に就任。現在に至る。