黒澤 聡子 | KOKUGAKUJIN | 学校法人國學院大學 | 法人サイト

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2024年9月27日更新

KOKUGAKUJIN #16

何よりも子どもの気持ちに寄り添うことが大切。

Q 子どもの頃は、どんなお子さんでしたか?また、どのような夢を持っていましたか?

 自分がやりたいことがあると、たとえ母に買い物に行こうと誘われても、「私は留守番がいい」と言って断るような頑固な子でしたので、扱いづらい子だなと母は思っていたと思います。(笑)
 絵を描いたり、踊ったりするのが好きだったので、母は近所の小さな教会の「お絵描き教室」に連れて行ってくれました。幼い私は教会の荘厳な雰囲気の中で絵を描くことが楽しく仕方がありませんでした。そんな私を見て、ぬり絵をたくさん買ってくれました。気に入った絵に色遣いを考えながら、色鉛筆で丁寧に塗り、仕上げていくのが楽しくて、家では毎日ぬり絵をして遊んでいました。
 小学校高学年の頃は科学に夢中になっていました。小学校では理科クラブに入り、近隣の小学校と合同で行われた磯採集にも参加して、海の生物を観察したり、顕微鏡で種の発芽の様子や様々な苔を見たりするのが好きでした。知らないことに出会ったり、いろいろな発見をするワクワクが楽しかったのだと思います。高学年の時の私の机には、子供向けの科学雑誌の付録の実験道具や顕微鏡が並んでいました。
 中学・高校時代はソフトテニス部に所属して、スポーツに熱中しました。白いボールを打つ毎日の中で、初めて夢を抱きました。それはプロのテニスプレイヤーになることです。そのために当初はダブルスの後衛を担当していたのですが、ボレーなどの技術を身に付けるために前衛でのプレイも練習しました。夏休みは毎日朝練、テニス合宿で特訓し、テニス漬けの毎日でしたが、同じ高校のペアには勝てないことで実力を知り、あっさり夢は諦めました。でも、今でもテニスは大好きなスポーツです。テニスの聖地、ウインブルドンにも行ってきました。
 小さい頃から様々な事に興味を持ち、突き詰めてきた私ですが、中でも幼児期のぬり絵に親しんだ経験は私の色彩へのこだわりに繋がり、色彩感覚が身についたように思います。幼児教育に携わるようになり、子どもの表現活動に興味が広がり、描画表現の研究もしました。子どもたちの絵は一人一人のその子らしさが表われていて、誰もが思わず笑顔になってしまう不思議な魅力があるところが大好きです。

Q 学生時代は、どんな学生生活を送りましたか?

 大学は日本女子大学の文学部教育学科に進学し、教育学や統計心理学を学びました。特に臨床心理学にも興味を持ち、より深く人間の内面を理解することに関心が高まり、箱庭療法やバウムテスト等は本を読んだり、研修会などに参加したりして学びました。

Q 幼稚園教諭になった理由は?

 その時々の目の前の興味に夢中で、学生時代は将来のことを深く考えていませんでしたが、教育学科でしたから幼稚園教諭の教員免許は取得していました。そこで東京都の公立幼稚園の試験を受けました。試験には受かったのですが、採用されず、翌年の再チャレンジを目指して、ある公立幼稚園での介助員の仕事を紹介されて、1年間勉強することになりました。そこでは、先生方が真摯に子どもと向き合い、保育を語り合う姿を見て、幼稚園の楽しさと幼児教育の難しさを知りました。そして、私の居場所を見つけたように感じました。特にこの園で行われていた幼児教育を探究する自主的な研究会は私の幼稚園教諭としての在り方を方向付けてくれました。自分たちで研修計画を立て、研修会の運営を行います。主任の先生を中心に若手もベテランもみんな平等な関係でお互いの悩みや疑問、考えを出し合い、切磋琢磨しながら幼児教育のことを学び合うという会でした。この自主的な研究会で様々な人に出会い、幼児教育の奥深さ、尊さを学びました。この経験は今でも私の心の拠り所となっています。
 翌年から東京都の公立幼稚園で正規採用教諭として働くようになりました。その園でも一緒に考え、悩んでくれる先輩の先生がいました。私は幼稚園教諭として、人に恵まれたと思います。担任として働き、やがて管理職となり、その後は特別区の教育委員会で先生たちを育てる研修の仕事に従事しました。教育委員会での仕事は若い頃から続けてきた研究会の経験が役に立ちました。國學院大學では教職顧問として、先生を目指す学生たちをサポートしました。そして今年(2024年)の4月から國學院幼稚園で園長として勤務しています。

Q 子どもと接する上で心掛けていることはありますか?

 幼稚園教諭に大切なことは子どもたちの気持ちを思い込みや色眼鏡を通して見ないことです。その子の本当の気持ちを教えてくれるのは、その子自身でしかありません。若い先生方が悩んでいると、私は「子どもに聴いてみて」と言います。子どもの表情や仕草をよく見ること、子どもの言葉に耳を傾けることで先生としての自分がするべきことが見えてくるからです。子どもの本当の気持ちを理解して、受け止めることが大切です。
 先生方は、保育後もたくさんの仕事をかかえています。それでも、職員室の事務作業の前に、まず保育室の掃除を丁寧に行うことを薦めます。子どもたちが帰った後、部屋の掃除をしながら、明日の保育を構想するのです。子どもがいた余韻やたたずまいからやるべきことが見えてきます。例えば、ある子どものお道具箱に折り紙でおった手裏剣がたくさん入っています。「一人で作ったのかな?」「友達にあげたかったのかな?」それとも、「その手裏剣を使って忍者ごっこがしたかったのかな?」と想像します。そこから明日はどのような遊びに発展していくのか、どのような環境や材料を用意したらよいのかと思いをめぐらせます。ほんの数分のことですが、その時間を大切にしてほしいです。子どもの心に近づくヒントが見つかるからです。自分の保育に悩んだ時は特にこの時間を大切にしてほしいです。

Q 黒澤園長が大切にしている言葉は?

 「いくつになっても変われる」です。國學院幼稚園の園長に就任する際、私立の幼稚園は初めてで、現場からもしばらく離れていたので、やっていけるか少し心配だったのですが、子どもたちの中に入ったら楽しくて、そんな心配は杞憂でした。私は今でも自分は進歩していると感じています。

Q 黒澤園長が考える國學院らしさ(KOKUGAKUJIN)とは?

 教職顧問として関わった國學院大學の学生たちや國學院幼稚園で働く先生方を見て感じるのは「学びに向き合う素直さ」ということです。それと「頑張り屋」。素直で頑張る姿に國學院らしさを感じています。

黒澤 聡子

國學院幼稚園 園長

東京都出身
日本女子大学文学部教育学科卒業
昭和54年4月に東京都公立幼稚園(現 特別区立幼稚園)に教諭として着任。
平成26年4月より特別区人事・厚生事務組合教育委員会事務局に勤務。
平成31年4月より國學院大學の教職顧問に就任。
令和6年4月國學院幼稚園園長に就任、現在に至る。

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